2006-02-01(水) 18:06:50
 〔ひなまつり展〕のお知らせ この展覧会に参加しています。

 ▲1/29(日)〜2/26(日)

 ▲山の上ギャラリー
     〒244-0004 横浜市戸塚区小雀町644-2
           TEL:045-852-8855

 ▲11:00〜17:00  月・火 休廊

 ▲ URL  www.kokonotuido.com

2006-02-02(木) 08:58:45
 岩泉の工房に 雪

 今年 初めての 雪が降りました。
 日本海側からの 冬雪か それとも 太平洋側からの春雪か、 どっちつかずの雪。
 海岸方面のスタッフが 遅れているのを考えると、少し春めいているのかも?

2006-02-02(木) 09:01:38
 ともあれ、このまま、春まで待ってるわけにもいかず、
 出勤できたスタッフだけで 雪を除ける。
 日光が まぶしいくらいに 照っている中での 除雪作業。

2006-02-03(金) 17:47:03
 盛岡市の雪。

 盛岡ショウルームの店長から 写真メールが届きました。
 ショウルーム裏の2階、屋根のひさし が雪の重みで 折れ
 氷の塊が 落下したとのこと。
 幸い、納品用の車は 怪我もなく、無事だった。

2006-02-03(金) 17:58:28
 なるほど、屋根の 波トタンの跡が付いた氷塊だ。
 岩泉から比べると 比較にならない 寒さだ。
 明日の最低気温は 氷点下11度くらいの予想。

 それにしても、数年前、龍泉洞みずまつりの TBS テレビの生放送
 朝6:00からスタンバイ。水払いの気温は 氷点下16度だった。
 あのとき、頭から水をかぶり終えた若者たちの 晴れ晴れとした
 顔が 思い起こされる。  

2006-02-04(土) 13:54:07
 いや〜 今日は 冷えてますね。
 盛岡の最低気温−11度予報が、−13.8度と外れ。
 岩泉は−8度。
 藪川は −26.5度 さすが、本州一番 寒いところです。
 岩泉から盛岡に向かって、早坂高原を 下りた 集落です。
 藪川そば は、唐辛子が効いていて 寒い時には、体がすごく温まっていいです。 

2006-02-05(日) 18:38:49
 高橋喜平先生を悼む
 日本エッセイストクラブ賞、吉川英治文化賞、岩手日報文化賞などを受章した、岩手県西和賀町(旧沢内村)出身の高橋喜平さんが95歳で逝去されました。
先生の著作は60冊あまりを数え、エッセーは言うに及ばず、俳句、小説、絵本、写真集と多方面にわたる。
先生には、平成2年9月1日 ふるさと創生事業“第1回森と水のシンポジウム”講師として招聘し、ご講演をいただきました。
因みに、『工藤 宏太の木の話』第3話に登場する“どろ亀さん”こと故高橋延清さんは、喜平さんの弟です。
喜平さんは和賀岳のブナを主体とする広葉樹林の保護運動先駆者で、昭和40年代後半、当時の林野庁に、和賀岳の自然環境保全地域、学術参考林を設置させた。
ブナ帯に付き物の雪、そして、植物、動物、人間生活文化、各方面に造詣の深い探求者でした。

2006-02-05(日) 18:54:54
 森と水のシンポジウム当日、喜平先生の講演の最後に、水についての面白い話があったので、紹介しておきましょう。
“水に流す”何かいざこざがあったとき『きれいさっぱり水に流そう』とよく言う。昔はそれできれいになったが、今はそうはいかない。ヘドロになる。何もかも化石燃料でできてるから。また、せっかく努力したのに失敗すると“水の泡”って言うでしょ。悪い事をするときに“水増し”だと言う。そして下らない議論が続くと“水掛論”だという。私みたいに下らん話をしてると“年寄りの冷や水”だと言う。親しい中でよそ行きの話をすると“水臭い”と言うでしょ。親しい人との別れには“水杯”だと言う。そして、人間の一番終わりに“末期の水”と言うのがあるでしょ。死んでいくときに唇をポツッと湿してやるのが末期の水でございます。
※高橋喜平先生の岩泉での講演録より抜粋しました。 合掌

2006-02-06(月) 18:36:09
 1979年10月24日 岩手県の原木市場での写真です。
 大きな丸太が 2本 見えますね。
 栓(セン) です。 遠野営林署 土倉山から産出されたものです。
 純木家具の緑色のトラックが積んでいるのは 桐の丸太。これもかなり大きな方ですが、栓の2本は桁外れです。
 このとき2本とも 当工房が 落札した物です。

2006-02-08(水) 08:31:04
 1979年11月22日 岩手県宮古市の製材工場で製材。
 自分の製材機では 製材できない太さなので、宮古の工場で製材してもらいました。
 ハンドルマンと製材機だけ借りて、あとは自前のスタッフで。
 遠野の土倉山の産。樹齢は300年。
 こんな大木が、日本列島に 立っていたんです。
 また、日本の気候は、こんな大木を育てるに適した条件なんです。
 人間が手を貸すまでもなく、宇宙が育ててくれるのです。
 広葉樹とは そういうものです。

2006-02-09(木) 19:09:52
 1992年2月13日 岩手木材市場で落札した栓(セン)の原木から採れた板。
白い材の中に 褐色の皮が入っているのが見えますね。これを“入り皮”と呼びます。
入り皮とは、文字通り、材の中に木の皮が入っている状態を言います。なぜ、こんな状態になるのか。樹木の根元が左図のような断面をしている木は、必ず入り皮があるのです。
樹木の成長時に、皮を取り込んで太っていくから、体の中に皮が残ってしまいます。
この栓の木は、本州で最も寒い藪川集落の北方6キロにある、上外川国有林から1991年秋に切り出されたものです。
岩泉純木家具ホームページ“テーブルのふるさと”にも採り上げています。
 

2006-02-12(日) 13:35:59
 週末に 青森県家具工業グループ対象に講演依頼があり
 行ってきました。
 その帰り道 岩洞湖を覗いて見たら 色とりどりのテントが
 ぽつぽつ 見えました。

2006-02-12(日) 13:42:53
 岩洞湖は週末になると 氷上での“ワカサギ釣り”が盛んです。
 駐車場は 車で 満タン。
 家族連れで にぎやかです。
 吊り上げた その場で から揚げ したり、
 持ち帰って テンプラにしたり、色々楽しんでいるようです。

2006-02-12(日) 13:46:04
 そうそう、先日 “藪川そば”に寄った時、
 新メニュー “ワカサギ天そば” とありました。
 これが一番 値が張ってましたね。
 季節物ですからね。

2006-02-13(月) 18:29:03
 何とも奇妙なものを抱いています。
 これは、1978年に 栗の大木の中から 発見した物です。
 これから、その話を紹介しましょう。

2006-02-14(火) 18:33:32
 自分の製材機では90cmより大きな丸太は板に挽くことができないので、友人の大きな製材所に運び、厚さ6センチに製材していって、ちょうど6枚目の板が離れたその瞬間、パッと毛のようなものが飛び散った。丸太に10×20cmくらいの穴があって、黒い毛が詰まっているような感じだった。「リスの巣だな!」と思い、軽い気持ちで取り出した。両手で反対側(顔と手)を見て放りだした。「なんだか気持ち悪い物だ!」と。

2006-02-15(水) 08:59:38
 雨上がりの原木市場で、ゴム長靴を履いて気に入る丸太を捜し求めていた私は、全体泥だらけ、傷だらけで皮が付いてない巨大な原木に出会った。
重量およそ4トンはあるだろう全身傷だらけの大きな体躯は、伐り方(伐採夫)や、出し方(搬出夫)の尋常ならぬ苦労を想像させるに十分だった。
樹種がわからず、腰に下げていた鉈で木口に近い部分を削って、臭いを嗅いでみた。その甘酸っぱいような臭いで「え〜!栗?!」こんな大きな栗がある?産地は盛岡市の東南方向、早池峰山麓の砂子沢とのこと。よく見ると辺材の部分は朽ちて、ほとんど無くなっている。倒れてからおよそ10年は経過しているのではないか、と思われた。
後日、年輪を数えると280年。「この栗はどうしても自分の手で面倒を見たい!」意気込んで入札したためか、他の買い方が価値を認めなかったのか、二番札の2倍の金額で落札してしまった。

2006-02-16(木) 09:08:28
 これが「子グマのゆりかご」。
丸太の外皮から年輪を数えて90〜120年前の位置に眠っていたことになる。ご覧のように、丸太が太すぎて、板が片方しか耳が付いていない。
身体は前かがみに二つ折りになって 相当に苦しかっただろう 生前か死亡後かは判らないが、腸が一部ゴム風船のように出ている。
それにしても、製材機の巨大な鋸刃が背中の皮すれすれに通過したわけで、最初に鋸を入れる位置が1cm違っていれば間違いなく切断されていたことだろう。
子グマは穴から取り出したとき樹液でグッショリ濡れていた。栗の木はタンニン成分が強く、タンニンは動物の毛皮を鞣(なめ)すために使われる。おそらく強いタンニン成分のおかげで腐朽を免れ、大きな栗の木の胎内で100年余も眠り続けて現代に出現した子グマの不思議。300年生きてきた木は、更に家具としての生命を300年は保たせてやりたい。そんな木への想いが私の心の中に深く残った。
それ以来「300年生きてきた木は300年使える家具に」を仕事の理念として、毎朝スタッフ全員で唱和してから仕事を始める。
あれから、もうすぐ30年近くなる。

2006-02-20(月) 11:25:55
 『クマのたんす』
 1997年10月15日 つまり、約20年後のことです。
この話を元にした 童話作家 茂市久美子氏の創作童話『クマのたんす』が出版されました。
 葛ウ育画劇 発行です。
 この童話は 文部科学省の推薦図書になり、全国の多くの小学生
に読まれたそうです。

2006-02-23(木) 08:23:51
 ミュージカル『クマのたんす』
1999年 童話『クマのたんす』は、茂市さんの脚本で盛岡子供劇団
“キャッツキャア”のミュージカル想像劇になりました。
3月に盛岡市民文化ホールで2回公演。4月に宮古市民文化ホールで、
9月には秋田県湯沢市で公演されました。
百年以上も岩手の栗の樹の中で眠っていた子グマが発見されてから
20年経って童話になり、ミュージカル公演されたわけです。

2006-02-24(金) 13:33:31
 『ブックマッチ』
岩泉純木家具のテーブルには、全くの一枚板と2枚矧ぎ、3枚矧ぎがある。
といっても、関係無い板をただ合わせるのではなく、ブックマッチという
兄弟、あるいは姉妹どうしの板を合わせるのだ。
このようにすれば、全体の形状が左右対称。そして、木目や節の位置まで左右対称になる。

2006-02-24(金) 13:43:21
 『ブックマッチ』-2
これもブックマッチの好例だ。
それぞれの一枚板では 割れ、節、入り皮があって、とうてい主役にはなりえない。
しかし、左右対称に組むと かなり個性的なテーブルであり、魅力に満ちたものになる。
左側のかなり奥行きのある方を部屋の壁面にセットすると、あたかも 大地から大木が生えたような感じで、四方から囲む使い方よりも、室内が広く有効に使えるので、木の有効利用に結びつくのだ。

2006-02-25(土) 14:30:29
 『樹木解剖図』
ここで、樹木の内部を解りやすく描いた私の図を紹介しましょう。これは1996年2月20日のものです。ときどき学生達が工房見学に来るので説明するために描いたもの。
図の下方向に大地があり、上方向には天がある。立木を切ったのを丸太(まるた)と呼ぶ。切った断面を木口(こぐち) と言い、元の太い方を元口(もとくち)上の細い方を末口(すえくち)と呼ぶ。
最も外側が樹皮。内側の大部分が木部。木部と樹皮の境目に形成層がある。皮の最も内側に栄養分たっぷりの形成層母細胞があって、せっせと細胞を作っている。内部に木部を、外側には皮細胞を。

2006-02-25(土) 15:27:58
 前の図と一緒に見てもらえれば、わかりやすいと思います。
樹の中心には この樹が地上に芽を出し、一年一年成長してきた歴史が刻まれている。
箸のように小さな頃は、ひょろひょろ曲がって、ちくちくと枝を出しているが、周囲にも樹が成長して日陰になってくると枝は枯れて落ちる。すると、翌年からこの枝を包んで隠しながら太く、通直に伸びていく。十年も経つとそんな枝など無かったかのように堂々としてくる。人間だって思春期に受けた“いじめ”や、心の傷を心身ともに成長していく中で克服していくように、結構太目の枝も包んでしまいます。
さて、木部では、中心に近い若い頃の細胞は時間軸で見れば古い細胞です。また、樹皮では、空気に触れている外側ほど最も古い細胞なんです。幼い頃の皮は外側にひらひらとゴミみたいに付いているだけでしょう。木部は日々太くなる。皮の内側は、それに合わせて作られるが皮の外側は徐々にひび割れ、縦割れしてきて本来の“その木”らしい表情になっていきます。
人間の子供も、幼い頃の肌はすべすべして、顔を見ても“この子何処の子”という感じですが、その子が中学、高校と成長するに連れ
親の特徴が現れてくるので、はっきりわかるのと同じなのです。

さて、この300年の歴史を刻む栓(セン)の板。山に立っているときは
、この状態で立っていたものと想像できます。
左側は谷側で、右が山側です。中心は割れが走っています。
割れから谷川と山側ではサイズが3倍は違いますね。
そう、立木には幹、枝、葉の重量に加えて雨、雪、風の圧力が猛烈に掛かります。その環境因子に耐えるため幹の形成上あらゆる対抗措置を取るのです。
まず、作った栄養分の大部分を山側の根や、根に近い幹の方に配分して筋肉を作ります。一方、谷川には できる限り太らせないようにするのです。谷川が太るとそれだけ重量が掛かるから。
同様に、枝の根元にもすごい筋肉組織ができます。
その筋肉組織が“あばれる”ことであり、逆に 宝石のように美しい“縮み杢”として珍重されることにもなるのです。
このことを いつも不思議に思います。「木のどの部分がどのように指示命令してそんな複雑な対処をするのか 」と。
きっと宇宙ですね。広葉樹は人間が植えたり手入れして成長してきたんではないし、自然に種子が落ちて自然に芽生え 強いて言えば「地球が、いや、宇宙が植えて育てたんだ」と。そう思います。

2006-02-27(月) 17:57:16
 二枚の板をブックマッチに並べてみました。
左右対称で、天然のハート型の空間ができています。

2006-02-27(月) 18:02:25
 同じ二枚の板を、今度は別の向きに並べました。
左右対称ですが、前とは 全く別な形になります。
1988年11月2日のことでした。

2006-02-27(月) 18:11:20
 これが完成作品です。
樹種は栃材 二枚の板をはぎ合わせる前に 予め 布着せをした板に
朱色の漆を塗り上げておき、はぎ合わせと同時に組み込んだものです。
ですから、天然のハート型が見事な朱色に輝いています。
周囲の椅子は このテーブルのためにデザインしました。
背もたれの飾り窓は ハートの形。しかも、朱漆が塗ってあります。
その下方の5本のスリッドは、黒漆塗。 そして背もたれのクッションには 黒漆を施した 竹 を使用しています。
今年、4月11日〜16日 東京 田中八重洲画廊で開催する個展には
久しぶりに このテーブルをお目にかけます。