岩泉純木通信Iwaizumi Jyunboku Times

BLOG|町と、木と、学生と。

こういう仕事をしていますと、いろいろな年代のかたとお会いしますね。

上は長年のお得意さまである90代のお客さまであったり、
下はテーブルをお届けした先の、
お母さんの腕の中ですやすや眠る生まれたばかりの赤ちゃんだったり。
工房には、元気いっぱいの地元の小学生などが
授業の一環として職場見学に来てくれたりもします。

意外と話す機会の少ない年代って、実は大学生かもしれません。
けっこう平日に家具をお届けすることも多くて、
もちろんその時にはお家にはいません。
課外授業で見に来るようなことも、せいぜい高校生までです。
自分でこだわりの家具を買うのは、ほんの一部のインテリアに凝った
学生さんくらいだと思います。

そんなわけで、話す機会がありそうであまりない大学生たちに、
このたび、

インターンシップ

という、思いがけない形で携わることができました。

20160827_2

インターンシップというのは、学生が会社などで短期間働いて、
実際の仕事を体験することで、進路決定だとか、
進む分野の仕事への理解を深めることですね。
なんでも最近は就職してから「こんなはずじゃなかった」と感じる学生や、
事前の説明ではやりがいのある仕事に見せておいて、
いざ採用したらここぞとばかりに苦行を強いる企業が多かったりして、
就労体験はとても大切な機会になっているんだそうです。
人だって初めて話した時とじっくり付き合ったあととでは印象が違ったりしますし、
たしかに働くことでも同じですよね。

20160827_1
とはいえ、うちのような零細企業では、なかなか会社を挙げて受け入れをするのは
難しいです。
特にインターンとなれば、何日、何週間、何ヶ月という期間になりますし、
その間の学生の心と体のケア、万が一の場合の事故対応など、
単独では大変です。
ところが我が岩泉町は、

「岩泉型インターンシップ」

と銘打って、町を挙げてインターンシップの受け入れを試みています。
岩泉型。
滞在費用は全て町が負担という、これはとても太っ腹な企画。
大学との調整や、学生のケアもすべて行ってくれて、
私たち企業は就労体験にしっかりと集中することができます。
うちとしてはほんとうにありがたい企画です。
今回は、岩手大学と岩手県立大学から、全体で11名の学生が応募してくれました。
この11名が5つの企業・団体に分かれて、1週間岩泉に滞在し、
4日間の仕事体験と、数日間の町内見学を行いました。

上の写真は、手前が学生(と町職員が1人)、後ろが関係者です。
私も入ってます。

実は、うちではこの期間全て学生を受け入れたんじゃないんです。
1日だけ。
でも、この1日が意義あること。
なぜなら、「岩泉の森と木を川上から川下まで体感する」という、
「林業コース」の一員として参加したからです。
これも、岩泉型。

iwaizumiforest

20160827_3

うちでは国産の材木を使っていて、特に来年から岩泉産の材を多くしていこうと
あれこれ準備を進めています。
ですから、材木の流れを作ることも大事ですし、人の流れを作ることも、
とても大切です。
今回の林業コースのインターンシップでは、
山の管理をする岩泉町森林組合さん、
伐採から製材、加工をする吉本さん、
集成材を作る日本木材さん、
そして製材から乾燥、家具作りをする弊社・岩泉純木家具
の4社がそれぞれ1日ずつ、まさに木材活用の上流から下流へと
学生に体験してもらいました。

20160827_4

いよいよ待ちに待った8月24日。
学生2人は朝礼から、細かく言うと朝礼前の体をほぐすラジオ体操から
仕事に入りました。

ものづくりの現場で一番気をつけなければならないのが、ケガ。
ラジオ体操も、眠気から体を目覚めさせるのが目的だったりします。

20160827_5
事故があっては大変ですから、直接刃物に手を近づけなくてもいい
自動加工のNCルーターの操作や、

20160827_6
若手職人に指導してもらいながらのオイル塗り、

20160827_7
前日に完成していた長椅子の梱包など、いろいろやってもらいました。
この職人にとっては、1日だけですが、初めての後輩になりました。

20160827_8
そして、この笑顔。
暑いなか頑張ってくれて、この大きな機械で座板が2枚完成。

20160827_9
もちろん、ベテラン職人の仕事見学もやりました。
仕上がった塗装前のテーブル天板を「さわってみていいよ」との職人の声掛けが
ありがたかったですねえ。

20160827_10
町の広報の担当さんが取材に見えました。
このお二人の笑顔は次号の「広報いわいずみ」の一部となります!

20160827_11
アルバイトなら言われた仕事をこなすだけでいいわけですが、
これはインターンシップであり、学びの機会。
時にメモをとり、時に写真を撮りながら、真剣に向き合ってくれました。
夜には宿で集まってミーティングやディスカッションを行い、
それぞれの職場での仕事について情報交換をしていたそうです。
ほんとうにおつかれさま。

20160827_12
始業から終業まで、弊社の仕事が今回の就労体験の締めくくりとなりました。
翌25日はインターンシップ最終日。
各事業所で体験をしてきた全学生と受入企業の代表が集まり、
それぞれ内容や感想を発表しました。
うちに来てくれた2名も、林業や木材の流れも含め、
しっかりと体験内容を発表。
他の職場ではどういった仕事を任せたのか、
どういう狙いでその仕事をやってもらったのかなどの発表もあり、
とても参考になったひとときでした。

うちの仕事は家具作り。
技術職ですから、多少なりとも木工を身につけた人に入ってもらえると
捗るのは間違いないですが、このようにこの日初めてうちに来た人でも
仕事はできます。
また、重い家具が多いので、これまで力の強い男性がほとんどの職場ですが、
力が多少弱いかわりに、こまやかな気づかいや品物の使いやすさの確認など、
女性でも活躍できる場があると再確認できたのは大きな収穫でした。
今後はいろいろな見方から、新しく一緒に働いてもらえる仲間を
探していきたいですね。
・・・もっとも、人件費のめどはまだ立っていませんが。

20160827_13

そして岩泉での全てが完了。
左から町役場、林業担当の今村さん。
まる1日頑張ってくれたHさんとMさん。
そして私。
・・・なんか後ろにいます!
今は東京を拠点に岩泉と各地の橋渡し役をしてくれている、
岩泉町まるごと営業本部の穴田さんと、
町側の担当Fさん。
最後まで「岩泉型」を貫いたインターンシップでした。

ちなみにこのテーブルは、昭和47年に弊社の社長が作ったテーブルのようです。

多くの方々がご尽力くださり、いろいろな職場でさまざまな仕事をおこない、
学生側・事業者側それぞれに多くの学びがあった岩泉型インターンシップ。
また来年も行われると思います。
ぜひまた明るい学生たちが岩泉に足を運んでくれることを願っています!

AさんFさんはじめ関係者の皆さん、参加してくれた学生さん、
ほんとうにありがとうございました。