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今日も土曜日に引き続き、花巻市石鳥谷の建設会社、高田工業さんによる、
崩落しかけている倉庫からの、一枚板救出大作戦、その2日目。
高田工業さんは総合的な建設を手掛けていらっしゃって、
住宅のトータルリフォーム、トイレや風呂など水回りの施工、
外構工事、そして中規模の公共工事など、あらゆることに通じるジェネラリスト。
今回は、その経験と技術をいかんなく発揮してくださっています。
https://takata-k.co.jp/
朝8時過ぎ。
今日も早朝に会社を出発、岩泉に来てくださいました。
土曜日の中型ダンプに続き、ユニック車で小型バックホウをお持ち込みに。
ただのユニック車かと思いきや、なんとセルフローダーじゃないですか!
重機・トラック好きの私、大喜びです笑
まずは、前日解体したプレハブ倉庫の瓦礫片づけから。
金属瓦礫をダンプに積み込み、小本近くの瓦礫置き場へ。
この後もう1往復したところで、瓦礫の運搬は断念することになりました。
ここから瓦礫置き場まで、片道30分以上、往復で1時間半ほどかかってしまいます。
そこに人員を割いていては、肝心の板救出が間に合いません。
残りはうちで行うことにします。
金属瓦礫が片付いたところで、バックホウのユニットを付け替え。
はさむためのグラップルから、定番のバケットへ。
これ、近くで見ると大きいです!
親子とかなら、2人並んで座れるんじゃないでしょうか。
付け替えたバケットで、基礎のコンクリートも、きれいに片づけていただきました。
こういったことは、自前ではできないため、本当に助かりますね。
コンクリートを片づけたバックホウは、流失した倉庫の跡の、いくらか緩い崖を崩し、
川辺へ降りていきます。
平地と違って、坂道はベテランならではの技術が必要。
バックホウのアームの位置や、クローラー(いわゆるキャタピラ)の向きで、
バランスを崩してしまわぬよう、周囲や足元を見極めながら、道を作ります。
川辺へ降りたバックホウは、さらに石を動かし、適度に土を盛り、
自らが歩む道を作っていきます。
なお、今回作業したのは、もともと倉庫などがあった、うちの敷地内。
もともと川だった部分などは、勝手に崩したりしてはいけません。
土木センターに確認の上で、適切に作業を行っております。
一見すると、あまりの凸凹で、バックホウと言えども通れるとは思えなかったこの場所。
しかしクローラーならではの機動性、バケットを活用した足元の地ならし、
そしてベテランの操縦技術で、無事に倉庫下まで向かいました。
土曜日の倉庫は、まあまあ安定していたため、木のつっかえ棒を入れました。
しかし、今回の倉庫はかなり不安定。
さらに、基礎の下が大きく割れてしまっています。
鉄パイプのつっかえ棒を何本も使ったうえで、バックホウでも支えます。
これは支えるのと同時に、わずかでも基礎が下がった場合に、
すぐに気づいて知らせる役割もありそう。
地震と同じく、初期微動の感知が重要です。
もう一つの安全の立役者が、この基礎に巻き付けたワイヤー。
これも、基礎の崩壊を食い止める役割を果たしますが、
「初期微動」を最小限、数ミリで抑えることにつながります。
大きな衝撃が加われば、崩壊が一気に起こりますが、
今回のような人力メインの作業の場合、わずかずつ崩壊が広がっていって、
あるとき一気に崩れ落ちる、という段階になると思われます。
そのわずかな崩壊を起こりにくくし、また起こった場合も最小限で抑えます。
この倉庫は、中身は木造。
下はコンクリートですが、木の柱や梁を使って作られています。
これらのおかげで、周囲の基礎が崩れなければ、全体の崩落の可能性は低いです。
そして周囲の基礎は、そこそこ深さがあるので、中に入って作業をすることに。
まずは安全なところから、1枚ずつ板を運び出していきます。
やや大きめのものは二人で。
こんな状態です。
中央付近は下がっているものの、その下にはしっかりと地面があります。
崩落が起こるとすれば、この地面が崩れるはず。
崖の下のバックホウからは、基礎の状態とともに、この地面の様子にも、
鋭い視線を走らせています。
大きく割れたコンクリートの基礎。
これは危険性のバロメーターでもあります。
こまめに割れの広さを測り、拡大していないかチェックを怠りません。
結果として、本日の作業中の割れ拡大は無し。
むしろ、割れた部分の上にあった材木の抜き取りで、沈みかけた部分が軽くなったためか、
割れが5ミリ狭くなったとの話も。
次第に板が大きくなってきました。
立派な板が、次々に運び出されてきます。
そしてついに、最大の難関にたどり着きました。
身長の2倍もあろうかという、長さ(高さ)3.5メートル、奥行き(幅)70センチもある、
重いナラの木の一枚板です。
これが10枚くらいあります。
入れたときは、当然床も割れていないし、水平でしたから、板の下に丸棒を挟み、
それをコロにして、なんとか収納していました。
ところが、今はこの状況。
広い倉庫でもありませんから、取り回しも難しく、また勢い余って倒してしまうと、
衝撃で崩れてしまいかねません。
現場でさまざまなアイデアが出され、持ち込んでいただいていたいろいろな道具を使い、
妙案にたどり着きました。
そういったところがすごいです!
臨機応変さは、イレギュラーな様々な現場に対応し、その場その場で最適な
安全策をとることにつながります。
丈夫な梁に鉄パイプを渡し、そこにチェーンで滑車を取り付けます。
一方、板は小さくともしっかりした万力ではさみ、滑車を通したロープを固定。
二人がかりでロープを引くと、重い板が動きます。
一方、下のほうは、金テコを使い、じわじわと歩くように動かしていきます。
天井に届こうかという長い材なので、建物に衝撃を与えないよう、
上にも目を光らせます。
下では指をはさんだら大けがになりますから、手早さと慎重さが必要です。
前まで出したら、板を横に寝かせて運び出すわけですが、
これだけ長い板ですから、そのまま倒すのは危険です。
土曜日も使ったバンドに付け替え、一気に倒れないよう、慎重に寝かせていきます。
後半は、バンドに付け替えずとも、引き出すための万力で十分だとわかり、
ひと手間減らすことができました。
皆さんの知恵と力で、無事に難関のナラ材がすべて運び出されました。
最後に、もっとも安全な場所でもある、道路側の板を運び出します。
大変だったナラ材救出の時と違い、スムーズに材木が運び出されます。
スタッフさんの顔にも笑顔が。
もちろん、気を抜いたら事故の危険がありますから、足元の確認や、
倉庫の中にいるときの警戒を怠らないのは、言うまでもありません。
ここで活躍したのが、この特製台車。
よく見たら、スケボーじゃないですか。
これはいらっしゃる前からご準備なさっていたものですが、臨機応変さがこんなところにも。
キャスターを使った台車って、固定タイプのキャスターですと向きが変えられませんし、
回転タイプのキャスターですと、ふらふら動いたり、急に横に動いたりして、
まっすぐ走りません。
ところがスケボーは、まっすぐ走るのが基本ですが、ある程度曲がることもできます。
しかも、グリップ力もしっかりしています。
実はとても扱いやすい台車になっていたみたいです。
救出された一枚板の数々。
ほとんど同じ大きさながら、かたや成長が遅く、200年くらいかけて育った、
目の細かいセンの木(左)と、成長が早く、おそらく70年くらいで太くなった、
目の粗いセンの木(右)。
迫力ある、トチの木の巨木。
川の流れのような、美しい木目の、センの木。
「三百年生きてきた木は、三百年使える家具に」という弊社のモットーを
体現するような、おそらくそれくらい生きた木です。
・・・変なのも出てきました。
なんでムシロで包まれてるんでしょう、これ。
ここまでで、地面の上にある床に乗っていた材木は、すべて回収できました。
残りは、地面から浮いたコンクリートに乗っているだけの板。
さすがに、これを抜き取るのは危険すぎます。
下から攻めようにも、建物が丸ごと崩落したら、逃げることができません。
また、床が崩れるだけでも、命にかかわります。
内部から、ロープをかけて引っ張ってみてくださいましたが、
ちょっとした衝撃で、板がバランスを崩し、落下してしまいました。
これで迷うことなく決断。
板の「救出」作業はここまで。
これからは倉庫の解体を行っていただき、残りの板は落下もやむなし。
最終的に、瓦礫とともに回収すればOK、ということにしました。
この後、強い雨が降り始めました。
正確に言うと、終盤から雨が降ったり止んだりして、最後に長い雨に。
ここで今日の作業は終了となり、明日の倉庫解体に向けての検討をしてくださいました。
建物の中に入っての作業でしたが、安全性を考慮してくださったため、
おかげさまで事故なく、無事に1日の作業が終わりました。
私もちょっとだけ中でお手伝いしたんですが、床が斜めになっていて、
柱なども幾分傾いているわけですから、平衡感覚がおかしくなりました。
その中で、重い板を、何時間も、何十枚も運び続けてくださった、
高田工業のスタッフの皆さま。
ほんとうにありがとうございました。
明日は最終日。
中に入っての作業はしなくてもよいと思いますが、一方で、建物が崩落する
危険性は高くなります。
引き続き、安全第一で、無事に終わることを祈っております。