岩泉純木通信Iwaizumi Jyunboku Times

BLOG|まったく違う分野の木工を見学してきました

うちでは木を使った手作り家具を生業としています。
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量産ではないオーダーものの木工といえば家具やクラフト小物などが思い浮かぶわけですが、世の中には一般的に知られていない様々な業種やいろいろな技術者がいらっしゃるわけで・・・。

ひょんなことから、岩手県金ケ崎町にある岩渕木型製作所さんを見学させていただきました(検索すると出てくる東京の会社とは別)。
まず木型とはなんぞや?

大型機械などの部品には、溶かした金属を型に流し込んで作る鋳造(ちゅうぞう)と呼ばれる製法で作られるものが多いです。
南部鉄器の鉄瓶なども同じ方法で作られます。
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では、金属を流し込むこの型はどうやって作るんでしょう?
いくつか方法はあるのですが、代表的な製法をご紹介します。

まず木で、作りたい物と寸分たがわぬ模型のようなものを作ります。
それにいろいろ混ぜた専用の砂をぎゅっと押し当てると、木型の外側をなぞった型がとれます。
この砂で作った型に金属を流しこむわけです。

下記リンク先のイメージがわかりやすいですね。
Link:株式会社浅井鋳造所様のウェブページ

木型とは、この最初に作った実物と同じ形をした模型のこと。
もしこの型がちょっとでもずれてしまうと、この型から作られる製品もすべてずれてしまいます。
何百個作ったあとにそれがわかってしまった日には、とんでもない損失につながります。
ですから、この木型づくりは極めて重要な仕事なのです。

さて、これは機械部品のひとつです。
ISUZUのロゴが入っていることから、トラックのエンジンの一部だと思われます。
もちろん、これは金属。
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これを作るための木型というのがこれ!
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モデルが違うため少々形は違いますが、イメージは伝わると思います。
これは表面の部分ですが、エンジンカバーですから裏側もくり抜かなければなりません。
裏側の型がこれ。
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なんとも複雑で、樹脂か何かで作られているようにしか見えません。

木工に携わる方はおわかりかと思いますが、こういう様々な曲線と直線が含まれる形状はかなり難解です。
しかもこれは機械部品ですから、図面と寸分たがわぬものを作らねばなりません。

どうやって削りだしているんでしょう?
うちでも今年ちょっとだけ導入を検討してその高価さから頓挫した5軸NCルーターでしょうか?
ところが、工房内に大きな設備が見当たりません。
がっちりした旋盤やバンドソー、ベルトサンダーなどがせいぜいで、あとはカンナなどの手道具ばかり。
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どうやって作るんですか?と伺ったところ・・・

これらの電動工具と手道具を使って手作りします

という衝撃的な回答が!

詳しくお聞きすると、さすがにこのまま作っても精度が出ないので、あらかじめ小分けにしてそれぞれをきっちり仕上げ、
それを組み合わせて完成させるという、まるでプラモデルのような作り方なんだそう。
「合わせ目はパテ埋めするけどね」
とはおっしゃいますが、それにしても非常に難易度の高い仕事であるのは想像に難くありません。

それを可能にしているのが、なにより職人さんの腕。
写真は若手職人が薄ベニヤを使った治具作りをしているところですが、大きなコンパスで曲線を描き、バンドソーとベルトサンダーで見事な滑らかさに仕上げていきます。
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「高い精度が求められるし、毎回色々なものを作るため、最初は『とんでもないところに来てしまった』と思った(笑)」
との言葉もうなずけます。

そして道具たち。

反鉋(そりがんな)。
普通は数個しか持たないものですが、岩渕木型製作所さんではこれらすべてが現役。
曲面の大きさの違いはもちろん、よく見ると二次曲面のもの(反鉋)と三次曲面のもの(四方反鉋)が。
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台鉋(だいがんな)。
寸法の違いや、角度がついたものがありますね。
曲面を作ることが多いお仕事なので、平面のテーブルやタンスなどを作る私らと比べて刃の減りは遅い様子。
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丸鉋(まるがんな)。
たくさんあるすべてが違う曲面用。
もしここにない曲面を作るときには新たにオーダー注文するんだとか。
ちなみに、うちの工房にはこれはありません。
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丸鑿(まるのみ)。
これも曲面によって使い分けるため、家具職人のものより研ぎ減りしにくい。
そのぶん、何本も必要です。
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鋸(のこ、のこぎり)と定規。
手に取りやすくわかりやすく、整然と並んでいるのがプロの証(私の作業台は・・・)。
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これらの道具を駆使して作られた木型は、今日も日本のあちこちで使われています。
商品そのものではなく、それを作るための型だけに、なかなか一般には日の目を見ない縁の下の力持ちな仕事。

その仕事の中でもわかりやすいのは、東京スカイツリー!
スカイツリーの業務用エレベーターに使われる巨大な滑車を作るための木型は、こちらの岩渕社長の手から生み出されました。

その記事がこちら。
Link:広報かねがさき 2012年10月号 Face(岩渕 亮三さん)

最後にわがままを言って一緒に記念撮影をさせていただきました。
もちろん右が岩渕亮三社長です。
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別件でおじゃましたのに、この仕事が面白く、素晴らしく、ついつい長居してしましました。
本当にありがとうございました。